ほめてもらいたかった。
あなたに褒めてもらいたかった
だから私 駅前の公園で 雪の中
あなたを待ってた
手編みのマフラー手にして
きれいにラッピングされた それを持って
あなたを待ってた
「よく待ってくれたね」と
「寒かったね」と
ねぎらいの言葉と「プレゼントありがとう」と
その言葉を聞くだけを楽しみに
雪のなか あなたを待ってた
でも あなた来なくて 現れなくて
このままでは 私 雪に埋もれてしまやしないかと考えて
ひとり くすくす笑った
夜の十一時を過ぎる頃
あなたから電話があった
携帯電話の向こうから 明るい声で
「ごめん、今日行けないや」
楽しそうなたくさんの笑い声があなたの後ろで響いていて
ああ 良い誕生日を迎えられたんだなと
私は
終電間際の電車に乗り ごとごと揺られ 下車して 自分のアパートに 誰も待っていない一人きりの部屋に
上を見上げると漆黒の空から 白い白い雪がちらちら降りてきて
うずくまった私の髪を 服を 靴を 何もかもを濡らしていくのを覚えた
これ以上 濡れる箇所なんてないと思っていたけれど
まだ 濡れる余地は私の体に有った様だ
アパートの鍵を開け
ドアを開き
なかに入り
鍵をかけ
眠るでもないのに そのまま私は
暗い夜に沈んでいった
眠るのでもないのに
沈んでいった
深く 深く 落ちて行った
夜の底に
深く
消えて行った
さようなら