夏草







夏草で指を切った
私の薬指からは血が滴って
夏草を紅く濡らした

目には見渡す限りの雑草の群れ
夏だ
夏だ

私は切れた指の傷をそっと押さえて
いっその事ちぎれてしまえばよかったのにと
そんな事思う

目には見渡す限り夏草の群れで
気が遠くなるほどの暑さ
夏だ
夏だ

私は傷口を優しく押さえ
止血しきれなかった血の滴が
草を紅く濡らした

夏だ
夏だ
私は一年前のあの日
同じく夏草で指を切ったあの人の指を
そっと舐めてあげた時のことを思いだして
紅い水と一緒に
目からも「なみだ」という名前の透明な水を流した

あの頃に戻れたら
私はそんなこと考えて
指を
あの人のと同じように
そっと舐めた





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