桜の町








あの町には 桜があった
桜があったんだ
「桜なんて何処にでもあるじゃないか」
そう言うひとがいる
いや そう言うひとばかりだ
でも
でも あの町には

川沿いの 清流と言うには程遠い川沿いの道に
桜の樹が あった
沿道に ずっと先まで
向こうの方まで 桜の樹々が植わっていて
そこを通るのが 好きだった
そして そこには君がいた
君が居たんだ

桜の樹々の下で 僕たちは 花びらに埋もれて
ふたり 居た

桜を見ると 思い出す
視界に入る度 思い出す
君と あの時の桜を
思い出す

忘れ得ぬ 記憶記憶記憶
溢れ出すように 思い出す





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