月の雫








月を見た
窓から月を見てた

月の陽は私を優しく包む
私は
私はそれを飽くこと無く
ずっと見ていた
誰も何もなければ夜が明けるまでずっと

窓に水滴が
水滴がついて
私はそれを月の雫だと思った

外は雨だった
いつの間にか降っていた
雫の群れが

私は窓を開け放った
手を差し伸べて
雫を受け取る
すべてを取り逃さないように

見上げると
月は叢雲のなかで照っている
しずかに
しずかに

私は月の降ろした雫の群れに
両の掌を広げて
ずっと待った

掌に雫を集めれば
やがてそこに
月が現れるような気がして

果たして月は
天上から
天上から来てくれた

私の掌のなかには
月がいた
ゆらゆらと
煌めいて
不確かながらも
そこにあった

握り締めると
月は
輝きをこぼしながら
落ちていった
でも下には月は無く
また天上に私を照らしていた

月の雫
何度でも
現れては消える
掌のなかで
揺らめいて

また何度でも
夜が明けるまで
輝いている






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